|
壱心farm 基山美奈子
鹿児島県 大島郡(伊仙町) 母牛:60頭、子牛:45頭、闘牛:3頭 取材日:2025年8月21日
血を選び、代を重ねて、形にする
記者「基山さんの牧場での“こだわり”について教えてください。」
基山さん「うちは繁殖農家として、母体作りに一番力を入れています。種付けして、良い子牛を生ませるのが仕事の要。だからこそ、基礎となる母牛の血統や体調管理には特に気を使っています。自分が肉牛を始めた当初から血統重視でやっていて、その血を受け継ぐメス牛を残して代を重ねていく。今の牧場は、そうやって作り上げてきた形なんです。」 記者「特にどの血統を使っているんですか?」 基山さん「一番の柱は“安福久”の血を引いた母体ですね。この牛の力は群を抜いていると思っていて、たまたま人気が出る直前に、うちでメスが立て続けに生まれたんです。その子たちを全部残して増やしていった結果、A5の12番の評価をもらう子牛がどんどん出るようになりました。購買者さんからも“メスが生まれたら必ず保留して”と言われるくらいで、今じゃ繁殖牛の8〜9割が自家産の牛です。」 記者「繁殖成績もすごく良さそうですね。」 基山さん「おかげさまで、2023年は分娩間隔が365日できていて、翌年は372日と安定した成績を出せています。出産後すぐには無理をさせず、発情2回目、だいたい30〜40日目あたりで子宮の回復を見て種付けします。一年一産はもちろん、より早いペースでまわせるようになってきているので経営的にも助かっています。ここは本当に慎重に、でも着実にやっている部分です。」 記者「種の付きやすさについてはいかがでしょうか?」 基山さん「だいたいの牛は1回、長くても2回でついてくれます。もちろん例外はあって、4〜5回かかる子もいますが、全体としては優秀だと思いますね。これは母体の質と、受精師さんの腕の両方に助けられている部分だと思います。あとは栄養管理も大事で、うちでは青草よりもロールサイレージが多い分、ビタミンが不足しがちになるので“ビタラップ”というサプリを産後2週間に1回は欠かさず与えています。」 記者「闘牛についても飼育されていると聞きました。こだわりはありますか?」 基山さん「闘牛は義父の代から続けているんですが、うちのこだわりは“自家産”であること。他の牧場から牛を買ってくることなく、自分たちの牧場で生まれたオスをそのまま闘牛として育てていくスタイルです。闘牛の血を引く無登録メス(血統登録のないメス)に種をつけて、そこから生まれたオスを選抜して投入しています。特に、かつて『第2勝王号』という登録牛を闘牛の母体に掛け合わせて生まれた牛が、全島一になるほどの活躍をしてくれたことは、うちの誇りですね。」 “一勝”の先にある、“壱心”の物語。
記者「壱心ファームさんの牧場について教えてください。牧場を立ち上げられたのはどなたですか?」
基山さん「私が初代になります。特に大きな牛舎というわけではありませんが、自分の手の届く範囲で、しっかり牛を見ながらやっていける規模を大事にしています。畜産を始めたきっかけは、もともと家が闘牛一家で、毎日草を刈るなら、その草も無駄にせず、登録牛を飼って少しでも収入につなげたいと思ったからなんです。趣味の延長のようなスタートですが、今では大切な仕事になっています。」 記者「闘牛は昔からやられていたんですね?」 基山さん「そうですね、嫁ぎ先が、闘牛一家だったので、自然と牛も家族の一員のような存在になってましたね。家族全員で牛に愛情を注いで育ててきました。時には、自分たちの子供よりも牛を大切にしている…というと語弊がありますけど、それくらい牛に情熱を注いできたんです。勝てる牛を育てる、その夢があるからやめられないんですよ。」 記者「壱心ファームという名前にも意味があるんですよね?」 基山さん「はい、実は孫の名前から一文字ずつ取ってつけました。孫の“壱大”ともう一人のお姉ちゃんが“心彩”という名前でして、その"壱"と“心”を合わせて“壱心”です。家族の思いが詰まった名前なんです。」 記者「息子さんも一緒に牧場をやられていると聞きました。」 基山さん「そうなんです。ちょうど2年前の9月に長男が夫婦で帰ってきてくれて、一緒に牧場をやってます。まだ子供はいませんが、いずれ次の代に繋がってくれればという思いもあります。ただ、私たちの役目は息子にしっかりバトンを渡すこと。あとは息子たちが先のことを考えてくれればいいかなと思ってます。」 記者「闘牛の今後の目標などがあれば教えてください。」 基山さん「今、闘牛が3頭いますが、まずは“1勝”が目標ですね。自信のある牛がいて、1勝1敗の成績なんですけど、稽古中に角を折ってしまって…3分の2くらい失いました。でも、やる気はあるので、治ったら復活させたいです。もう一頭はデビューが早すぎたのか、喧嘩をしなかった子で、相手の不戦勝になってしまいましたが、今一番期待している牛です。体重は900kgくらい、中量級でチャンピオンを狙える器だと思ってます。」 記者「牧場で使っているおすすめの道具やアイテムがあれば教えてください。」 基山さん「“アベイラ4”という添加剤ですね。ジンプロという会社の製品で、これを使い始めてから繁殖成績がグッと上がりました。価格は30kgで36,000円ほどと高めですが、与える量は1日10〜30g程度なので、意外と長持ちします。発情がわかりづらかった牛が明らかに変わって、今ではほとんどの牛が1〜2回で種が付きます。導入前は3〜4回が当たり前だったんですけどね。今ではピンポイントで体調に不安のある牛に使うようにしていて、結果にも満足しています。」 “できるか”より、“やるか”
記者「壱心ファームさんでは、アソードという飼料をかなり前から使っていただいていると聞きました。導入のきっかけは何だったんでしょうか?」
基山さん「きっかけは、慢性的な下痢が止まらない子牛がいたことです。何をやっても食欲がなく、特に濃厚飼料を食べてくれなくて、身もつかない状態でした。そんな時に知人から『これ、いいよ』と紹介されたのがアソードでした。試しに飼槽にポンと置いてみたら、下痢の子が舐めてくれて、それをきっかけに濃厚飼料も食べるようになったんです。その子は痩せてましたが、なんとかセリに出せて、これには本当に助けられました。」 記者「その子はその後、どうなったんですか?」 基山さん「その子はセリではそんなに高値はつきませんでしたが、出荷された先でグングン伸びて、最終的には体重800kg超え、枝肉で500kg以上になったと聞いています。本当に奇跡のような成長でした。腸内環境が整ったおかげで、後の伸びに繋がったんだと思います。」 記者「それはすごいですね。熊本でも『アソードをあげた牛は伸びる』って話をよく聞きますけど、壱心farmさんもまさにそれですね。他にも印象に残っているエピソードはありますか?」 基山さん「同じように慢性下痢のメスがいて、売っても値段がつかないだろうから保留したんです。アソードをあげ続けていたら、みるみるうちに体調が改善して、登録時には立派な体型に成長してくれて。1回で種もついて、今ではうちの優秀な母牛のひとつになってます。その子の子牛も残すほど良い血統に育って、今じゃ“ばあちゃん牛”として活躍してくれています。」 記者「長く使われてきた中で、使っている時と使っていない時での違いを感じたことはありますか?」 基山さん「実は導入の牛で下痢がひどくなった子がいたんです。今も体つきがガリガリで…。その時アソードが切れていたんですよね。『あの時にあげていたら…』って今でも思います。やっぱり腹づくりや体調管理には大きく関わってくると実感してます。」 記者「最後になりますが、基山さんの“座右の銘”を教えてください。」 基山さん「『為せば成る』ですね。元々、夫が郵便局員で、私は一人で牛飼いをしていました。女だからできないって言われるのが本当に嫌で、自分で牛舎の屋根を建てたり、トラクターの免許も40歳過ぎてから取りに行ったりしました。お産も、最初は獣医さん頼りでしたが、今では異常じゃない限り、自分で全部やります。子牛を死なせた経験があるからこそ、何としてでも守りたいという思いが強くて…。努力すれば、結果はちゃんとついてくるんです。だから、若い人たちにも『まずはやってみて』と伝えたいですね。」 アベイラ4
ジンプロ社のミネラル添加剤「アベイラ4」は、繁殖成績の向上に効果を発揮するアイテムです。1日10〜30gの少量投与で、発情が分かりにくかった牛にも明らかな変化が見られ、種付けの成功率が向上。以前は3〜4回必要だった種付けが、今では1〜2回で済むようになったと基山さんも実感。高価ながらもコストパフォーマンスに優れ、体調管理にも役立つ心強い飼養サポート製品です。
アソード
子牛の腸内環境を整える栄養補助資材「アソード」は、下痢や食欲不振の改善に効果が期待できるアイテムです。実際に慢性的な下痢で濃厚飼料を食べなかった子牛が、アソードを舐めたのをきっかけに回復し、最終的には800kg超の体重にまで成長した事例もあります。他にも、体調を崩して売れなかったメス牛が母牛として活躍するまでに成長したケースも。継続使用により、腹づくりや食い込みの改善が見られ、牧場全体の成績向上にも貢献。基山さんは繁殖牛への活用も視野に入れており、母体の回復促進や後産停滞予防への効果にも注目しています。
Writer_T.Shimomuro
0 コメント
返信を残す |
概要和牛農家に3プライドを取材しました。 ■取材日時■
11月 2025
■養豚農家一覧■
すべて
|













RSSフィード