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株式会社だいち 上岡大地
鹿児島県 曽於市 肥育牛:30頭、親牛:280頭、子牛:200頭 取材日:2025年7月25日
堆肥を極めて、牛を肥やす。
記者「上岡さんの牧場では、特にこだわっている点について教えてください。」
上岡さん「やっぱり多頭飼いをしているので、牛がストレスを感じない環境を作ることに全力を注いでいます。同時に、飼料代も高騰しているため、1頭あたりのコストをいかに抑えるかという点も非常に意識しています。餌の質や牛の様子を日々見ながら、無駄なく管理できるよう工夫を続けています。」 記者「そのコストを抑える工夫として、特に効果を感じている取り組みはありますか?」 上岡さん「大きいのは、自家製の飼料を使っていることです。親牛にはほぼ全て自給飼料で対応しているので、購入飼料に比べてコストがだいぶ抑えられています。そのための土づくりにも力を入れており、地域の畑管理センターに協力を仰ぎながら、畑の状態を数値で管理して良質な草を育てています。」 記者「牛のストレス対策について、牛舎の構造や管理で工夫している点は?」 上岡さん「うちでは妊娠した牛を妊娠牛同士で分けたり、特に弱い個体はさらに別に管理するようにしています。60日前には出産前専用の部屋に移動するルーティンを守っていて、本当は個室が理想ですが、今は牛舎のキャパが限界です。個体の性格や力関係も見極めて配置を考え、牛が穏やかに過ごせる環境を整えています。」 記者「ストレス対策として、飼料や添加物の工夫もされていますか?」 上岡さん「はい、カビ毒の吸着剤を年間を通して全頭に与えています。この地域は特別カビが多いわけではありませんが、梅雨時期などにはどうしても発生しやすくなるので、予防の意味でも欠かせません。コストは1頭あたり年間5,000円ほどと高いですが、流産や健康被害のリスクを考えると、決して惜しめない投資です。」 生まれる前から始まる牛造り
記者「上岡さんの牛の状態に点数をつけるとすれば、何点くらいですか?」
上岡さん「今の段階では60点ですかね。親牛の受胎率や栄養状態は安定していて、体のコンディションも良好だと思っています。ただ、子牛の体重や体型にばらつきがあって、出荷の時に揃っていないことが課題ですね。そこをもっと整えていければ、全体の質が上がると思っています。」 記者「その“ばらつき”というのは、主に体重のことですか?」 上岡さん「そうですね。体重と、体型のバランスのことです。牛によって発育の差が出るのですが、管理の差だけでなく、その子の持つ遺伝的な要素も大きく関係しています。だから、遺伝の部分をしっかり見ていくことも必要になってきますね。」 記者「そうした体型やバランスの改善には、具体的にどういうアクションが効果的なんですか?」 上岡さん「現在は、優れた母牛から採卵して受精卵移植を行うことで、質の高い子牛を目指しています。優れた体型・体重を持つ母体からの受精卵を使い、できるだけバランスの取れた子を多く生ませる取り組みですね。ただし、母体の体格や分娩時の状態によっても子牛の発育に影響が出るので、その点も慎重に見極めています。」 記者「60点を100点に近づけるために、今後どんな点が重要だと思いますか?」 上岡さん「大きな課題は牛舎の構造ですね。特に夏の暑さ対策がまだ不十分で、風の通りやファンの配置などを改善したいと思っています。加えて、良質な母体の確保や受精卵の質の向上にも継続して取り組む必要があります。どれも時間がかかる作業ですが、牛の快適さと質を上げるためには欠かせません。」 記者「牧場で使っているおすすめのアイテムがあれば教えてください。」 上岡さん「うちは『ファームノート』を使っていて、個体ごとの管理を全部スマホやタブレットで行っています。導入前は手帳にメモしていたのですが、今はどこにいても情報を確認できて、すごく便利ですね。牛の位置や健康状態がすぐに分かるのは大きな強みです。」 記者「ファームノートを導入して、特に変わったと感じた点はどこですか?」 上岡さん「ワクチンの管理が圧倒的に楽になりましたね。生まれる日がバラバラな子牛たちに、それぞれ適したタイミングで打たなければならないので、人の記憶だけでは限界があります。ファームノートなら"本日ワクチン接種対象です"と通知されるので、打ち忘れがほぼなくなりました。」 記者「牛の数も多いですし、その管理を人の手だけでやるのは大変ですよね。」 上岡さん「そうですね、うちでは約500頭を繁殖牛から子牛まで一括で管理しているので、ファームノートなしでは正直やっていけないです。漏れなく、正確に、誰が見ても分かる形で情報を共有できるというのは本当に助かっています。」 一等を超えて、“究極”はつくられる。
記者「目標にしている方や、影響を受けた“師匠”のような存在はいますか?」
上岡さん「はい。僕の目標は、祖父ですね。今はもう高齢ですが、若い頃は本当にリーダーシップがあって、思いやりにも溢れていて、地域でも人望が厚い人でした。そういう祖父の姿を見て、自然と“こういう人になりたい”と思ったんです。僕が牛を好きになった原点も、やっぱり祖父や父のおかげだと思っています。」 記者「畜産の技術や考え方なども、おじいさまから教わったのでしょうか?」 上岡さん「そうですね。技術面は時代とともに変わってきてはいますが、牛への愛情や接し方、畜産に対する姿勢というのは祖父から自然に受け継いできたものだと思っています。小さい頃から市場にも連れて行ってもらっていたので、気づけば“将来は牛をやるんだろうな”って思っていました。畜産に進むのは自然な流れでしたね。」 記者「畜産は“3K”とも言われ、厳しい現実もあると思いますが、それでもこの道に進んだ理由は何だったんですか?」 上岡さん「たしかに厳しい業界です。でも、自分が牛と向き合っている時間が好きなんですよね。中学の時にはもう農業高校に進もうと決めていて、卒業後は鹿児島の農業大学へ、さらに北海道の酪農学園大学院で受精卵の研究を学びました。この業界の大変さも分かった上で、それでも挑戦しようと思えたのは、やっぱり牛への愛情と、自分の手で変えていきたいという思いがあったからです。」 記者「最後に座右の銘を教えてください。」 上岡さん「“究極の牛造り”です。去年、鹿児島県の共進会で『みすず3号』という牛が県共進会で首席を獲得しましたが、満足していません。もっと良い牛を作るために、また一から挑戦しています。」 記者「『うちはうちに合った牛を作ればいい』という考えもある中で、上岡さんがトップを目指し続ける理由は何ですか?」 上岡さん「たぶん僕の性格ですね。やるなら上を目指したいんです。せりでも昨年はトップセールを4〜5回取りました。意識すれば結果は自然とついてくると思います。でもそれは、自分一人じゃ無理です。家族、畜産関係者、仲間、スタッフがいてこそ、ここまで成績を残せているのだと思います。」 記者「もし、上岡さんのように上を目指したいという若い畜産家が現れたら、どんなアドバイスをされますか?」 上岡さん「アドバイスなんておこがましいですが、やっぱり“地道に努力すること”だと思います。僕自身もまだ途中の段階ですし、納得していません。もし一緒に頑張りたいという人がいるなら、一緒に話し合って高め合っていけたら嬉しいです。答えなんて一つじゃなくて、考え続けること、積み重ねること、それが一番大事だと思っています。」 ファームノート
「ファームノート」は、牛の個体管理をスマホやタブレットで行える牧場向けのデジタルツールです。牛の位置や健康状態、ワクチン接種のタイミングなどを正確かつリアルタイムで把握でき、500頭規模の牛も効率よく一括管理できます。情報を共有しやすく、作業のミスや抜け漏れを防げるため、多頭飼育の現場で大きな力を発揮します。
Writer_Y.Eguchi
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概要和牛農家に3プライドを取材しました。 ■取材日時■
12月 2025
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