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藤岡畜産 藤岡平和
鹿児島県 大島郡(’天城町) 親牛:38頭、子牛:22頭 取材日:2025年8月19日
触れ合いこそ最強の武器
記者「藤岡さんの牧場で一番大事にされている“こだわり”について教えてください。」
藤岡さん「まず大切にしているのは“スキンシップ”です。牛を1頭1頭、毎日必ず触れて様子を見ることで、小さな変化や体調の違いに気づけるんです。ただ人に慣れさせるだけでなく、弱い牛が群れの中で負けてストレスをためないよう、人間が間に入ってあげる意味もあります。そうすることでストレスが和らぎ、しっかり餌を食べて健康を保てるようになるんですよ。」 記者「それを取り入れようと思ったきっかけは何だったんですか?」 藤岡さん「SNSで他の農家さんの取り組みを見たり、地域のイベントに参加したりしたのがきっかけですね。特に妻が積極的に情報交換してくれて、“うちでもやってみようか”と始めました。実際にやってみると、女性の方が牛の扱いが柔らかくて、牛たちも自然と寄ってくるんです。自分がやるよりもリラックスしている様子があって、やっぱり動物は敏感に人の気持ちを感じ取るんだなと実感しますね。」 記者「奥様と一緒に工夫されているんですね。他にも牧場で取り組まれている工夫はありますか?」 藤岡さん「はい、牛舎には“EM菌”という微生物を散布しています。糞尿の分解を助けてくれる菌で、臭いを減らしたりハエを寄せ付けにくくしたりするんです。その結果、牛たちが快適に過ごせて病気の予防にもつながるんじゃないかと考えています。目に見えにくい工夫ですが、牛にとってストレスの少ない環境を整えることが、結局は健康や成長に直結するんですよ。」 記者「牛舎の環境づくりについても気を使われていると聞きました。」 藤岡さん「はい、牛が休む床は特に気を使っています。座ると鼻が床に近くなるので、空気が悪いと子牛が体調を崩す原因になるんです。だから常に清潔に保つようにしています。ただコンクリートの床は硬すぎて蹄に負担がかかるので、その点も考えて工夫が必要ですね。」 環境を耕し、未来を育む
記者「藤岡さん、今の牛の状態に点数をつけるとしたら、何点になりますか?」
藤岡さん「そうですね…正直に言うと60点です。もっとできることがあるという思いが常にありますし、今のやり方を続けていけば良くなる部分もあると思っています。7割くらいは現状維持でいいかなと思いつつ、あと3割は“改善できる余地”、さらに1割は“もう一段上のレベルに挑戦したい”という意味で、そこを差し引いて60点としています。」 記者「“もう一段上のレベル”というのは、具体的にどういったところを指すんでしょうか?」 藤岡さん「数字でいえば、分娩間隔や繁殖成績、そして出荷頭数の安定ですね。年間の分娩回数に対して8割くらいは子牛を無事に出荷できるのが理想だと言われています。今のうちはそこに届いていないので、まずは安定してそのラインを越えていきたい。そこが一つ“上のレベル”の目標なんです。」 記者「では、60点から100点に近づけるために、一番改善したい部分はどこですか?」 藤岡さん「大きいのは哺乳期間の個体管理です。人工保育の3か月間、子牛の体調変化にいち早く気づいて先手を打てるかどうかで、その後の成長が大きく変わります。今は病気になってから対応してしまうことが多いので、下痢を起こさせない状態を目指して、より予防に力を入れていきたいですね。」 記者「ほかに改善したいと考えていることはありますか?」 藤岡さん「そうですね、牛の部屋の確保も課題です。どうしても頭数が多いとスペースが限られてしまい、相性を考えて部屋割りしていても窮屈さが出てしまう。もっと部屋を確保できれば、牛たちのストレスを減らして健康につながるはずです。環境面を整えることで、より100点に近い牛づくりができると考えています。」 記者「藤岡さんのおすすめのアイテムや道具があると伺いましたが、どんなものを使っていらっしゃいますか?」 藤岡さん「はい、2つあります。1つは“霧吹き”、もう1つは“プラスチックほうき”です。霧吹きはEM菌や消毒液などの液体を入れて、牛舎の上の方に掛けておきます。牛が舐めてしまう心配も少なく、いつでも使えるのが便利なんです。機械の油や掃除にも使えますし、スプレーの音で牛が驚くこともないので優しく使える。せり場に持って行って、牛の毛艶を良く見せたり、足元を整えたりする時にも重宝しますね。」 記者「なるほど、生活の知恵としても使えるんですね。ではもう1つのプラスチックほうきについて教えてください。」 藤岡さん「これは餌寄せが本来の使い道なんですが、それだけじゃなくて牛へのスキンシップにも使っています。顔や背中をさっとブラッシングしてあげると、牛も気持ちよさそうにしてくれるんです。以前は竹ほうきを使っていましたが、どうしても先が折れて固くなってしまい、小さな子牛には向かないこともありました。プラスチック製は耐久性があって、親牛から子牛まで安心して使える。持ちも良くて、今ではこれがうちの定番になっています。」 親から子へ、そして地域へ
記者「藤岡さんにとって、師匠や目標にしている方はいらっしゃいますか?」
藤岡さん「はい。近くにいる受精師の朝木さんという方です。自分にとっては畜産のことをほぼ全般にわたって教えていただいている存在ですね。特にすごいのは洞察力で、牛のちょっとした仕草や休憩中の姿勢を見ただけで『この牛は調子が悪いな』と見抜けるんです。子牛に関しても、少し元気がないだけで熱を測ったら40度を超えていた、なんてこともありました。やっぱり牛を幼い頃から見続けてきた経験の積み重ねが、その鋭さを作っているんだと思います。」 記者「そんな方が身近にいらっしゃるのは心強いですね。藤岡さんが座右の銘として大切にしている言葉を教えてください。」 藤岡さん「自分は“辛抱強さ”という言葉を大事にしています。畜産を始めた当初から子牛の価格の下落や、コロナや戦争による飼料高騰など厳しい時期が続いています。正直しんどいことも多いですが、そんな中でも諦めずに踏ん張ることが必要だと日々感じています。辛抱強さがなければ、この仕事は続けられないと思いますね。」 記者「その辛抱を支えているものは、どんな思いなのでしょうか。」 藤岡さん「息子と一緒に畜産をやっているので、“次の世代につなげたい”という思いが一番強いです。息子も結婚して、これから家庭を築いていく中で、家族経営のモデルケースを形にしていきたい。そのためにも、自分が今ここで踏ん張らなければいけないという使命感があります。徳之島で畜産を営む以上、地域を守る役割もあると思っています。また、自分は中学を卒業してからずっと親元を離れていたんですが、親が病気になったのをきっかけに戻ってきて畜産を始めました。もう7年ほどになりますが、恩返しをしたいという気持ちが大きいです。そしてそれを突き詰めると、親への恩返しだけじゃなく“地域にどう貢献できるか”というところに行き着きます。親から受け継いだ畜産を、今度は息子へ、孫へと託していけるように。その流れを守りたいという思いが、自分を動かしています。」 霧吹き
藤岡さんが愛用する霧吹きは、消毒液やEM菌を入れて牛舎の上から噴霧できる優れもの。スプレー音が静かで牛を驚かせず、毛艶を整えるなどせり場でも活躍します。機械の油掃除にも使え、牛が舐めてしまう心配も少ないため、衛生管理や日々の手入れに幅広く対応できる便利なアイテムです。
プラスチックほうき
本来は餌寄せ用として使われるプラスチックほうきですが、藤岡さんは牛とのスキンシップにも活用。顔や背中を優しくなでるようにブラッシングすると、牛もリラックスした表情に。竹ほうきよりも耐久性に優れ、先が折れにくいため、親牛から子牛まで安心して使える、牧場で重宝されている道具です。
Writer_T.Shimomuro
1 コメント
Hello-j BOM1
9/9/2025 14:28:45
牛さんたちは尽くしてくれた分をしっかりと、
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概要和牛農家に3プライドを取材しました。 ■取材日時■
1月 2026
■養豚農家一覧■
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