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株式会社堀内牧場 堀内幸浩
福岡県 朝倉市 肥育牛:170頭、母牛:30頭 取材日:2026年1月26日
“今日が初めて”の目を守る平常心
記者「堀内さんが就農されたきっかけについて教えてください。」
堀内さん「元々は畜産じゃない別の仕事をしてたんです。実際に戻ってきたのは30歳のときですね。子どもの頃は、休みがなくて、汚れるし、正直“こんな仕事はやりたくない”って思ってました。でも外で働いてみたら、どの仕事にも大変さはあるって分かった。ちょうどその頃、父が体調を崩して“頭数を減らして畳もうか”って話が出たんです。なくすのは簡単だけど、ここまで続いてきたものを止めるのはもったいない。だったら自分が継いで、もう一回やってみようって。深い理由というより、腹を決めたら意外とシンプルでした。」 記者「畜産の“魅力”とは、どんなところで見えてきたんでしょう?」 堀内さん「一番は“客観的に見られた”ことかもしれません。子どもの頃って遊びたいし、夏休みでも冬休みでも牛の世話で、自由がない印象だけが残るんですよね。でも別の仕事を経験して、良い面も悪い面もあるのはどこも同じだって気づいた。そこで改めて畜産を見ると、マイナスに見えやすいだけで、実はやりがいが大きい仕事だなって思えたんです。生き物と向き合って、状態が良くなったときの手応えとか、うまく育ったときの喜びとか。そういうのは、机の上だけじゃ味わえない。戻ってから、その魅力がじわじわ効いてきましたね。」 記者「牛飼いの中で、いちばん苦労していることは何ですか?」 堀内さん「“毎日同じ感情で牛を見る”ってことが一番むずかしいです。慣れって便利なんですけど、慣れた瞬間に見落としが出る。だから極端に言えば“今日が初めて”くらいの気持ちで、同じ作業を繰り返さないといけない。自分の調子が良い日も悪い日も、牛には関係ないですからね。成績が良いと気が緩みそうになるし、悪いと焦って視野が狭くなる。そこをブレずに、平常心で観察する。結局、技術より先に“自分のコントロール”が問われる仕事だなって、今も思います。」 記者「今後、堀内さんの牧場をどうしていきたいですか?規模や理想の和牛像など、イメージがあれば教えてください。」 堀内さん「規模は少し増やしたい気持ちもありますけど、それより“より安全で、よりおいしい和牛”を安定して作れるようにしたいです。和牛って、日本のこの飼い方・管理の積み重ねで成り立ってると思うんですよ。だから質のブレを減らして、全体の底上げをしたい。あと、最近は赤身志向もありますけど、改良が進んでサシは入りやすくなってるのが現実で、簡単に昔に戻れる話じゃない。だったらサシは活かしつつ、胃もたれしにくい“脂の質”を餌の工夫で作っていく。人の都合で牛を振り回すんじゃなくて、牛に報いるやり方で、食べた人が“もう一口いける”って思える肉を目指したいです。」 足し算より引き算の飼養管理
記者「堀内さんがいちばん大事にしている考え方は何ですか?」
堀内さん「一番は“できるだけ何事もシンプルにする”ってことです。極端な話、濃厚飼料と粗飼料、この“さじ加減”だけで上手に牛を仕上げられるようになりたいんですよ。もちろん現実はそんな簡単じゃないし、添加剤とかいろんなものに助けてもらう場面はあります。でも、先に何かを足すんじゃなくて、まず牛の状態をちゃんと見て、“今この牛に足りないのは何か”“何を求めてるか”を読み取る。そこができれば、余計なものを使わずに済む。手間を省くためのシンプルじゃなくて、観察の精度を上げた先にたどり着くシンプル、って感じですね。」 記者「堀内さんの言うシンプルとは、具体的にはどういう飼い方のイメージですか?」 堀内さん「“道具や薬で整える前に、牛のコンディションで整える”ってイメージが近いです。例えば、餌の内容をあれこれ足して反応を見るより、まず粗飼料と濃厚飼料の組み立てで土台を作る。牛がしっかり食べて、胃(ルーメン)の動きが落ち着いて、便の感じも整って、毛ヅヤも出る。そういう基本ができてると、結局余計な“テコ入れ”が減るんですよ。もちろん群飼いなので、全頭が同じ反応ってわけにはいかない。だからこそ、群全体の空気を見ながら、個体も見て、ズレが出そうな牛を早めに拾う。シンプルにしたいっていうのは、雑にしたいって意味じゃなくて、“見る力”を磨いて、余計なことを減らしたいってことなんです。」 記者「堀内さんが尊敬している方はどのような方ですか?」 堀内さん「自分が始めた頃に筑前町におられた“行武(ゆくたけ)さん”って方ですね。この辺だと福岡でも結構有名な人で、頭数はめちゃくちゃ多いわけじゃないのに、いい枝肉を作る。もちろん素牛の選び方もうまかったと思うんですけど、それ以上に、牛に対する情熱がとにかくすごかった。もう前面に出てるタイプで、誰が見ても“この人、牛が好きなんだな”って分かる熱量。自分はどっちかというと内に秘めるタイプなんですけど、それでも“50、60になっても、何十年続けても、あの情熱を持ち続けるのはすげえな”って単純に憧れました。病気をされて亡くなられて、今はもう廃業されてるんですけど、やり方というより、あの姿勢が今も自分の芯になってますね。」 共存で、食わせる“感動の一口”
記者「アソードを導入された“きっかけ”について教えてください。」
堀内さん「一番のきっかけは、ほんと“たまたま飛び込みで来た営業の方との出会い”です。牧場やってると、飛び込みで話をしに来る人も時々いるんですけど、こっちも散々いろんな話を聞いてきてるから、“いいことばっかり言うなあ”って思う場面もあるんですよ。うまくいく話だけ並べられても、現場はそんな甘くないって知ってるんで。でもその時は、話してて最初に思ったのが『あ、この人、嘘ついてないな』って。こっちが突っ込んで聞いたことに対しても、返しが早くて、準備してきてるのが伝わった。自信があるからこそ、どう広めたいかまで筋が通ってる感じがしてね。うちに合うかは別として、もしハマるなら“使わん手はない”って、興味がふっと湧いて。滅多にポンって導入することはないんですけど、その時は珍しく、スッと試してみようってなりました。導入は、1年経つか経たないか…そのくらいですね。」 記者「実際に使ってみて、まず最初に見えた変化はどこでしたか?」 堀内さん「子牛のミルクで使い始めたその日から、便が変わったのが一番分かりやすかったですね。色が濃くなったというか、黒さが増したというか…“消化がちゃんと回ってるな”って感じる締まり方になった。下痢がゼロになるわけじゃないけど、下痢する頻度は確実に減りました。あと、スターターの食い始めが早くなったのも大きいです。感覚ですけど、食う量は2割以上増えてると思います。うちは80日で離乳なんですけど、前は80日で1キロ食ってれば“まあいい方”だったのが、今は60日で1キロ食う子牛が増えてきました。『1キロを安定して食う時期が早くなった』っていうのが、現場での実感ですね。」 記者「成長の仕方にも変化はありましたか?」 堀内さん「まさにそこです。体の“幅”が出だしたんですよ。今までも大きくはなってたけど、幅があんまり出なかったのが、哺育の段階で“厚みがついてきたな”って感じるようになりました。しかもミルクの量は変えてない。そこがまた面白いところで、食いが安定して、スターターを早くからしっかり食べられるようになった結果として、体づくりの土台が整ってきたのかなって。あと、うちは注射でドンと入れるより、基本的に口から入れるやり方が好きなんです。注射って、効く時は効くけど怖さもある。口からだとロスはあっても、牛の反応を見ながら調整できるし、感覚的にも安心なんですよね。」 記者「子牛だけじゃなく、親牛にも使っていると聞きました。繁殖面ではどうですか?」 堀内さん「親牛も使ってます。分娩の1か月前から、決まった量を入れてるんですけど、一番変わったのは“産後の初回発情が明確になった”ことですね。ここが見えると、そこを起点に次の動きが組み立てられる。結果として、産んでから40〜55日くらいの間で種付けがほぼできてる。初回発情って、ほんと見つけるのが難しいんですけど、それが分かりやすくなったおかげで観察もしやすいし、準備もできる。今のところは“一発で付いてる牛が多い”っていう実感もあります。環境や管理で差は出ると思うけど、うちでは繁殖のところで手応えがかなりありますね。」 記者「最後に、堀内さんの座右の銘について教えてください。」 堀内さん「『共存』ですね。自分が今こうやって牛の仕事をさせてもらえてるのも、結局“たまたま”牛屋の息子に生まれて、“たまたま”継いで今がある。そう思うと、偉そうなことは言えないんですよ。むしろ、教えられてるのはこっちの方で。牛って、こっちが分かったつもりでいても全然分かってなくて、毎日『まだ知らんことあるな』『もっと知りたいな』って気持ちにさせられる。そういう存在が牛なんです。それに、牛肉ってタンパク源のひとつとして絶対に必要な食べ物だと思ってるし、自分は“感動する牛肉”を作りたい。食べた瞬間に、ちょっとアドレナリンが上がるような、衝撃があるやつ。特に若い子に食べてもらって、反応を見るのが楽しくてね。『美味しい』で終わってもいいけど、そこから興味を持ってくれる子もいる。そういう“きっかけ”を増やしていきたいんです。で、そのためには牛だけじゃなくて、周りの人、獣医さんも餌屋さんも、流通の人も、食べる人も、みんなで同じ方向を向かないといけない。牛肉って野菜みたいに“採れた、食え”じゃなくて、間に関わる人が多い分、どこかが雑になると美味しさが届かない。だからこそ、牛とも、人とも、次の世代とも、ちゃんとつながって、みんなで良さを感じながら生きていく。それが自分の言う『共存』ですね。牛飼いが減ってるのも確実で、牛の数が減れば価格も上がる。そういう現実の中でも、和牛を“文化”としてちゃんと食べてもらえる形を残したい。その中で自分は、牛肉の役割を果たせるように、他に負けない“感動する一口”を作り続けたいと思ってます。」 レブセルSC
生きた酵母を含む機能性飼料「レブセルSC」は、ルーメンの微生物バランスを整え、牛の“食いの安定”をサポートします。特にわらや乾草をしっかり食べる牛づくりを目指す方におすすめで、天候や湿度による食いムラを抑える効果も実感されています。堀内さんが10年以上使い続けられている信頼のアイテムです。
アソード
アソードは、子牛の軟便をサポートし、導入初日から便の変化が見られるなど即効性のある効果が特徴です。色が黒く、締まりのある便になったことで「消化がしっかり回っている」と実感されており、下痢の頻度も明らかに減少。スターターの食い始めも早まり、従来より20日以上早い段階で1kgの食い込みに到達する子牛が増加しています。その結果、体の大きさだけでなく“幅”や“厚み”といった質感のある成長が可能となり、土台からしっかりした体づくりに貢献しています。
Writer_T.Shimomuro
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概要和牛農家に3プライドを取材しました。 ■取材日時■
1月 2026
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