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合同会社田畑ファーム 田畑奈々
鹿児島県 大島郡(伊仙町) 育成牛:10頭、親牛:195頭、子牛:121頭 取材日:2025年8月21日
骨格は遺伝、育て方は執念
記者「田畑ファームさんが特にこだわっている点について教えてください。」
田畑さん「やっぱり一番は“フレーム(体格・骨格)の大きい牛”を育ててセリに出すことです。大きく育つ牛は市場での評価も高く、それだけで価値が違います。母牛も元々大きい個体を選んで残してきていて、自然とそうした子牛が生まれやすい環境を整えているんです。小柄な牛はうちの方針に合わないので、そういう個体は最初から避けて、飼いやすく大きく育ちやすい牛を中心に育てるようにしています。」 記者「体を大きく育てるための工夫や取り組みは具体的にどんなことをされていますか?」 田畑さん「まずは母牛へのケアを重視しています。大きな子を産んでもらうには、妊娠中からの飼養管理が重要で、分娩2ヶ月前からは特に濃厚飼料と粗飼料をバランス良く与えています。また、出産した子牛の成長の傾向を全て記録し、次の種付け時に参考にするんです。例えば、メスばかり産む牛やオスが多い牛もいて、それぞれに合った種を選ぶことで、より市場で評価される子牛を目指しています。全てがうまくいくわけではないですが、確実に手応えはありますね。」 記者「種付けもご自身で行っているとお聞きしましたが、どのような経緯で?」 田畑さん「6〜7年前に就農した時に、人工授精師の資格を取りました。それまで保育士と幼稚園教諭をしていたんですが、一から勉強して、永吉ファームさんで研修を受けながら技術を身につけました。永吉さんは本当に島でも一番の繁殖頭数を誇る牧場で、社長さんも若い農家に対してすごく親身に教えてくださる方で、今でも本当に尊敬しています。そこから今までずっと、自分の目で選んで種付けしています。」 記者「コスト管理の面では、特に飼料費がかかると思いますが、どう対応されていますか?」 田畑さん「濃厚飼料は購入ですが、粗飼料はほとんど自家産で賄っています。父が畑の管理を全てやってくれているので、私は繁殖や子牛の管理に集中できています。購入飼料は価格が高騰することもありますし、やっぱり自分たちでコントロールできる部分を増やすというのは経営的にもとても大事だと感じています。畑作と連携することで、飼料コストも大きく抑えられていますね。」 記者「先日、モーモー母ちゃんの集いにも参加されていたようですが、そこで得た学びや気づきはありましたか?」 田畑さん「はい、実行委員としても少し関わらせていただいて、伏見先生の講義が特に印象的でした。“ゴリラの子はゴリラ、猿の子は猿”という例えがすごくわかりやすくて、やっぱり最初から大きく生まれた子は順調に育つけど、小さく生まれた子はその後も手がかかる。だからこそ、子牛の管理だけじゃなくて、もっと前段階の“親牛”へのケアが大切なんだと強く感じました。ミルクの量も、体格に合わせて調整していいと聞いて、今後はロボットの設定も見直していこうと思いました。あのような場で他の農家さんの考えに触れられるのは本当に貴重です。」 数字で語れる牛飼いに
記者「ご自身が育てている牛の状態に点数をつけるとしたら、何点くらいでしょうか?」
田畑さん「そうですね、今は“70点”くらいかなと思います。3〜4年前までは80点をつけてもよかったかなと感じるのですが、当時は両親がバリバリ現場で動いてくれていた時期で、市場の相場も良く、増体も順調でした。ただ私が自家保留の選定を任されるようになってから、血統改善に力を入れた分、どうしても小柄な牛が増えてしまい、以前ほどのフレームの大きさが出せなくなった反省があります。だからこそ今後の改善に期待を込めての“70点”です。」 記者「その点数を100点に近づけるためには、どんな課題があると考えていますか?」 田畑さん「一番は“繁殖成績の改善”です。以前は最大230頭ほど管理していた時期もありましたが、人数はたった4人。発情の発見も難しく、結果的に分娩間隔が空いてしまい…。現在は平均で400日ぐらいの間隔です。本来なら一年一産を目指したいのに、まだまだです。受精卵移植も取り入れていますが、受胎率も思うように改善していません。でも今は、母体の管理や繁殖の記録を自分で一元管理しているので、判断が早くなりました。次はその記録を“データ化”して、もっと見える化していくのが課題ですね。」 記者「育成中の牛の体調管理や疾病への対応はいかがですか?」 田畑さん「子牛の下痢や風邪も時期によって流行ったりします。ワクチン接種や治療も基本的に全部自分でやっているので、以前は本当にキャパオーバーになってしまい…。今はスタッフみんなで役割分担してるのでだいぶ楽にはなっていますけど、それでもやっぱりもう1人必要だなと感じます。そのためにも、子出しの数を増やして収益を上げて、経営を安定させることが、今の私の課題ですね。」 記者「そのような経営改善のために、特に役立っている道具やシステムがあれば教えてください。」 田畑さん「うちでは『肉用牛繁殖経営管理システム』を活用しています。種付けや分娩、セリの売上など、全ての情報を一括で管理できて、必要な時にすぐ確認できるのがとにかく便利。子出しの傾向や母牛の出産歴、生まれた子牛の特徴もメモできるので、次の種付けにすぐ活かせます。通信料もかからず、Wi-Fi環境がなくても使える買い切り型なのも魅力です。徳之島では“どんぶり勘定”が多いと言われがちですが、こういうデータ管理で感覚頼りの経営から脱却していきたいですね。」 謙虚に、太く、まっすぐに
記者「田畑さんが“師匠”として尊敬し、目標にしている方について教えてください。」
田畑さん「はい。私の師匠は、永吉ファーム代表の永吉輝彦さんと、奥様の清美さんです。7年前、徳之島に戻ってきて農業を始めると決めたとき、両親は農業の経験はあっても専門的な知識には自信がなく、『まずは勉強しなさい』と言ってくれました。そこで“島で一番儲かっている農家さん”を聞いたら、皆さんが口を揃えて“永吉さん”と。どうしても現場を見たいとお願いして、県の普及職員の方に繋いでもらい、最初は見学のつもりが、そこから研修として受け入れてくださることになったんです。」 記者「研修を通じて、どんなことを学ばれたのでしょうか?」 田畑さん「もう毎日が学びでした。最初は牛のことも何もわからなくて、輝彦さんにしつこいくらい質問していました(笑)。そしたら『ななちゃん、勉強するなら人工授精師の資格を取ってきたら?』と勧めてくださいました。そこから授精の知識を深めることができたのは本当に大きかったです。そして、奥様の清美さん。あの方の“牛への愛情”は本当に深くて、いつも優しくて、まるで母のような存在です。最初は牛のよだれが嫌だとか、服が汚れるのが嫌とか思っていた私が、今では牛を“可愛い”と思えるようになったのは、清美さんのおかげです。」 記者「そのお二人との出会いが、田畑さんの人生に大きな影響を与えたんですね。」 田畑さん「まさにその通りです。輝彦さんからは“経営者としての視点”や“フレームのある牛作り”を、清美さんからは“牛への愛情と向き合う姿勢”を学びました。お二人がいなければ、今の私は絶対にいません。娘のように可愛がってくださって、本当に感謝しかないです。今後は、私自身が“この弟子を育ててよかった”と思っていただけるような人間になっていきたいです。」 記者「最後に、田畑さんの“座右の銘”を教えていただけますか?」 田畑さん「はい。“実るほど頭を垂れる稲穂かな”という言葉が、私の中で一番しっくりきています。本当にすごい人ほど、偉そうにせず、どんな人の話にも耳を傾ける柔らかさがある。私が尊敬する農家さんや社長さんたちも、常に謙虚で勉強熱心。だから私も、どんな立場になっても人の話に耳を傾けられる、そんな器の広い人間になりたいと思っています。今までたくさんの方に支えられてきたので、これからは私が誰かの支えになれるような、そんな存在を目指したいです。」 記者「今後、田畑さん自身が目指す姿についても教えてください。」 田畑さん「まずは両親に“ゆっくり休んでもらえる環境”を整えるのが第一ですね。父も母ももうすぐ引退を考えているので、その分、自分がしっかり経営者として成長しなければと思っています。将来的には従業員を増やし、農場を安定させたうえで、いずれは規模拡大も目指したいです。そして最終的には、師匠である永吉さんに“この弟子を育ててよかった”と思ってもらえるような、そんな牧場経営者になれたらと思っています。」 肉用牛繁殖経営管理システム
「肉用牛繁殖経営管理システム」は、種付けや分娩、セリでの売上といった情報を一元管理できる、現場目線で使いやすい管理ツールです。母牛の出産歴や子出しの傾向、生まれた子牛の特徴まで細かく記録できるため、次の種付けにもすぐに活用可能。通信料不要、Wi-Fi不要の買い切り型で、電波環境に左右されずに運用できる点も魅力です。感覚や経験に頼りがちな繁殖管理を、データに基づいた戦略的な経営へと導く頼れるアイテムです。
Writer_T.Shimomuro
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概要和牛農家に3プライドを取材しました。 ■取材日時■
12月 2025
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