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吉岡牧場 吉岡滋
熊本県 合志市 母牛:120頭、子牛:50頭 取材日:2025年11月12日
倒れて見えた、新しい道
記者「吉岡さんが畜産の道に進まれたきっかけについてお伺いしたいんですが、最初は何をされていたんですか?」
吉岡さん「もともとは建設業に携わってたんですけど、仕事中に事故に遭ってしまって…。そのときに“もう現場には戻れないかな”と思って。それで、実家が牛を飼っていたこともあり、“じゃあ自分も牛飼ってみようか”と決意しました。少しは“いつかはやるんじゃないか”という気持ちはあったんですが、その事故が本格的に畜産へ舵を切る転機になりましたね。」 記者「それは大きな転機だったんですね。始めた当初は何頭ぐらいの牛からスタートされたんですか?」 吉岡さん「最初は8頭ほどでした。当時23歳くらいで、今から12〜13年前の話になります。右も左もわからず、まさに手探り状態。でも機械の扱いは建設の現場で慣れていたので、そこはちょっと強みでした。少しずつ覚えながら、牛たちと一緒に成長してきた感じですね。」 記者「それから牧場もどんどん大きくされて、今ではかなりの頭数を飼われていると聞きましたが、一番大変だったことは何ですか?」 吉岡さん「やっぱり資金繰りですね。牛舎を新しく構えたときも、以前の牧場主から受け継いだ土地を、自分たちで一から整備しました。この場所も、もとは草だらけで人の手が入ってない状態でした。それを一から整備して、牛を迎え入れられるようにしたんです。牛を増やすには牛舎も広げないといけない。理想と現実の間で、常にバランスを取りながらやってきました。」 記者「なるほど。牧場の牛舎について、何か特にこだわっているポイントはありますか?」 吉岡さん「運動場の広さですね。うちは牛がよく歩けるように広く確保していて、放牧しなくても運動になるくらいのスペースがあります。もともと草が生い茂ってて向こうが見えないくらいの土地でしたが、そこを借りて、自分たちで手を入れて牛が快適に過ごせる環境にしました。運動場が広いと牛の健康状態もいいし、分娩も自然に任せられることが多くて助かってます。」 記者「お話を聞いていると、着実に一歩ずつ積み上げてこられたんだなと感じます。今後、牧場をどうしていきたいという思いはありますか?」 吉岡さん「これ以上大きくするつもりはあまりないですね。今は自分一人でやってる部分が多いですし、無理に規模を広げても管理が難しくなるだけかなと。もし息子が継ぐって言ってくれたら、その時はまた違った形になるかもしれませんが、今は今のペースでやっていくつもりです。家族の手を借りながら、自分たちらしい牧場経営を続けていきたいですね。」 現場の声が一番の教科書
記者「吉岡さんの牛の育て方について、特に日々気をつけていることやこだわりがあれば教えてください。」
吉岡さん「一番大事にしとるのは“毎日の観察”です。餌をやる時に、1頭でも様子がおかしい牛がおればすぐに気づけるようにしとります。特に、餌を食べに来ない牛は要注意ですね。熱を測ったり、必要があれば別の部屋に移すようにして対応します。毎日見とると、ちょっとした変化にもすぐ気付けるようになるんですよ。」 記者「牛舎の設計や環境面でもいろいろと工夫されているようですね。どんなところに配慮されているんですか?」 吉岡さん「本当は朝日が当たって、西日が当たらんような牛舎が理想なんですけどね。うちは前の牧場主さんから買い取った牛舎なんで、それが難しくて。西日が当たる部分にはギア(よしず)をつけたり、雨の日はカーテンで雨が入らんようにしたりして工夫してます。特に子牛には朝日を当てたいっていう考えがあるけん、将来的には別に牛舎を建てて、子牛専用にしようかと考えとります。」 記者「音楽を流して牛たちをリラックスさせる工夫もされているとお聞きしました。」 吉岡さん「はい、ずっとラジオを流してます。牛が急に音に驚いたりせんようにっていうのもあるし、酪農でも“音楽聴かせると牛乳がよく出る”って話を聞いたことがあって、和牛でも効果あるかもしれんと思ってやり始めました。今ではすっかり習慣ですね。静かすぎると逆に落ち着かん時もありますしね。」 記者「餌についても工夫されていると伺いました。特に“ぐんぐんエース”や“FMB”という名前が出てきましたが、詳しく教えていただけますか?」 吉岡さん「“ぐんぐんエース”は3~5ヶ月の子牛に食べさせとります。これにはモネンシンが入ってて、体が大きくなりやすく、体重もスッと乗ります。ただ、それを9ヶ月10ヶ月までずっと与えると“モネンシンショック”が出る恐れがあるので、うちは5ヶ月で徐々に切り替えます。いきなりやめると下痢したりするので、パラパラと減らしていくんです。FMBはバガスや麦、とうもろこしが入った飼料で、消化が良くて胃袋の“センマイ”もよく育つ。オスにはがっつり食べさせますが、メスには太りすぎないように加減してます。」 記者「吉岡さんの畜産技術は、ご両親から教わったものなんでしょうか?」 吉岡さん「いや、親からはほとんど教わっとらんです。全部ほぼ独学ですね。あと、大きかったのは“飲み会”での学びです(笑)。繁殖農家さんや肥育農家さんたちと酒飲みながら、どんな牛がいいとか、今どんな交配が人気あるとか、リアルな情報を聞くんですよ。現場の声ってやっぱり本で読むよりずっと勉強になるけん、今でも続けてます。」 一歩踏み出せば道はできる
記者「吉岡さんがアソードを導入されたきっかけは何だったんですか?」
吉岡さん「最初は営業の方が持ってきてくれて、“一回試してみてください”って言われたのがきっかけです。ちょうどその時、子牛が下痢してて、試しにアソードを使ってみたら、フンが黒くなって調子が良くなったんです。そこから“これはいいかも”って思い始めて。最初はミルクに混ぜたりもしましたけど、今は夕方だけ食べさせて、それで下痢も治まったので、アソードに切り替える決断をしました。」 記者「なるほど。導入してすぐに効果を感じられたんですね。食べさせ始めの頃に“なかなか食べてくれなかった”というお話もありましたが、どうやって食べさせるようにしたんですか?」 吉岡さん「最初はなかなか食べない子もいました。でも、うちでは“はぐくみ”っていう粉の餌の上にアソードをちょっとずつ混ぜて、“隠すように”してやったんです。最初は手で混ぜて、その上から少しずつ振りかけるようにして。そうするとだんだん慣れてきて、ある日突然ガッツリ食べるようになりました。あとは、1頭だけじゃなくて、数頭一緒に飼ってると競争意識が働いて自然と食べるようになるんですよ。」 記者「実際にアソードを使ってから、どんな変化を一番感じていますか?」 吉岡さん「やっぱり一番は“下痢が少なくなった”ことですね。フンも黒くて健康的やし、匂いも全然違う。前は牛舎に入った瞬間、ツンとする匂いがあったけど、今はそれがほとんどせん。見学に来た人にも“匂いがしませんね”ってよく言われます。やっぱり腸の調子が整っとる証拠なんじゃないかなと思ってます。」 記者「最後に、吉岡さんの座右の銘を教えてください。」 吉岡さん「“やればできる”ですね。昔から親父にも“せんことには何も進まん”って言われとって、実際に牛舎を買う時も“まずやってみるしかない”って気持ちで決断しました。投資も大きかったけど、やるって決めたらどうにかなるもんです。やっぱり、行動せんと何も変わらんですけん。」 FMB
『FMB』はバガス、麦、とうもろこしなどをバランスよく配合した高消化性の飼料で、特に牛の第四胃“センマイ”の発達を促す効果があります。吉岡さんはこの飼料をオス牛にはしっかり食べさせ、筋肉質で大きく育てる一方で、メス牛には太りすぎないよう量を調整して与えているとのこと。胃の健康と消化力の向上を重視する飼養管理の一環として、FMBは重要な役割を果たしています。
ぐんぐんエース
生後3〜5ヶ月の子牛の健やかな成長を支える『ぐんぐんエース』は、体の成長を促す“モネンシン”を配合した飼料です。吉岡さんの牧場では、子牛の体重がスムーズに増え、骨格のしっかりした育成につながっていると実感されています。ただし、長期間与え続けると“モネンシンショック”と呼ばれる影響が出る可能性があるため、5ヶ月を過ぎた頃から徐々に減らしていくのがポイント。急にやめると下痢を起こすこともあるため、慎重に切り替える工夫が大切だといいます。
アソード
営業担当者の紹介で試験的に導入された『アソード』は、子牛の下痢対策として始まりました。吉岡さんは「最初に与えた時、フンが黒くなって調子が良くなった」と効果を実感し、夕方の給餌に取り入れるように。現在では下痢の発生も抑えられ、安定した育成ができているそうです。導入初期は食いつきが悪い子牛もいたものの、粉飼料「はぐくみ」に混ぜて少しずつ慣らす工夫を重ね、複数頭で飼うことで自然と食欲を引き出すことに成功。今では牛舎の匂いも軽減され、「見学者に“匂いがしないですね”と言われるほど」と話す吉岡さん。腸内環境の改善が牛全体の健康に直結していることを実感されています。
Writer_T.Shimomuro
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概要和牛農家に3プライドを取材しました。 ■取材日時■
11月 2025
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