益田牧場 益田良則
熊本県 球磨郡 親牛:9頭、育成牛:2頭、子牛:7頭 取材日:2023年11月17日
自然と共生する育成術
記者「益田さんの牛の育て方について教えてください。特に子牛の段階から出荷までのプロセスについて知りたいです。」
益田さん「子牛は生まれてから3ヶ月間は特別に調合した人工乳を与えて育てます。20日から1ヶ月頃には濃厚飼料を食べ始め、これは牛の成長に不可欠な栄養を提供します。その後、9~10ヶ月間、一定の濃厚飼料と粗飼料を組み合わせ、牛たちの健康と成長を最適化しています。私たちはWCS、藁、イタリアンサイレージという3種類の飼料を緻密に計算された比率で給餌しており、これがうちの牧場の牛たちの絶品の肉質を生み出す秘訣なんです。」 記者「その濃厚飼料についてもう少し詳しく聞かせてください。出穂前と出穂後のWCSの嗜好性の違いや、他の特別な飼料についてのこだわりはありますか?」 益田さん「実は、私たちは出穂前のWCSを重視しています。出穂前の段階で収穫することで、牛が好む味わいと栄養バランスを最大限に引き出せるんです。濃厚飼料に関しては、一つの信頼できるメーカーの製品を使い続けています。これは牛の消化システムにとって安定した環境を保つためで、結果として高品質の肉が生産されるんですよ。」 記者「飲み水に関してはどのようにこだわっていますか?また、牛たちに与える水の種類に特別な配慮はありますか?」 益田さん「牛たちには井戸水を与えています。水道水のカルキは牛にとって好ましくないので、自然な井戸水が最適なんです。牛は水の質にそこまで敏感ではなく、必要に応じてどんな水でも飲む生き物ですが、清潔で新鮮な水を提供することで健康を維持しています。」 狩猟と牛育成の融合
記者「狩猟についても伺いたいのですが、いつから始められたんですか?また、その背景にはどのような理由がありますか?」
益田さん「狩猟は約8年前、49歳の時から始めました。この辺りでは獣害が問題になっており、自ら狩猟を学ぶ必要があったんです。イノシシや鹿を罠で捕まえる技術を習得し、地域の獣害対策に貢献しています。ハウス園芸で育てるメロンなども野生動物の被害を受けるので、狩猟は農業を守るためにも不可欠なんですよ。」 記者「獣害被害というと、主に作物への影響を思い浮かべますが、人間への襲撃など、他の形での被害も起きるのでしょうか?」 益田さん「この地域では、イノシシによる人間への襲撃は聞いたことがありませんね。しかし、野生動物は予測不能な行動をすることもあるため、常に警戒は必要です。熊本近辺の金峰山などではイノシシが結構いるんですよ。宇城のような地域では、みかん農家が獣害に対処するために罠を設置しています。地元の農家からの依頼で獣害対策を行う組織も増えてきているんです。特に鹿やイノシシは、新しく作られた草地に惹かれて食いに来るんですよ。イタリアンのサイレージを食べられることも多く、農作業にも影響を与えています。」 記者「狩猟を自己流で学ばれたとのことですが、その学習プロセスはどのようなものだったんですか?」 益田さん「狩猟を始めるにあたり、役場との話し合いや狩猟免許の試験について情報を得ました。免許取得後は、山に入ってイノシシや鹿の行動パターンを自分で学んでいきました。最初の年は鹿を2、3頭捕まえた程度でしたが、年々捕獲数は増えてきています。獣害は減らない一方で、狩猟を行う人は少なくなっています。里山ではエサが豊富で、動物の子育ての成功率も高いため、野生動物の数は増え続けています。親の栄養状態が良いと、特にイノシシはかなり大きくなり、3年で60kgから70kgにも成長するんですよ。」 守り抜く土地:狩猟農家の物語
記者「狩猟免許を取得する過程で、座学のようなものはあったのでしょうか?どのように勉強されましたか?」
益田さん「はい、狩猟免許取得のためには座学が必要です。年に5回、阿蘇や宇城、天草、県庁などで講習が行われます。講習後には試験があり、選択問題に答えて合格すれば、狩猟免許を取得できます。ただし、免許を持っていても、実際に罠をかけるためには猟友会への加入が必要です。猟友会には年間24,000円の費用がかかり、これにはハンター保険も含まれています。保険は、万が一人に怪我をさせた場合の保証などをカバーしています。」 記者「罠に関してはどのような制限があるのでしょうか?また、得意な罠の仕掛けはありますか?」 益田さん「狩猟においては、1人で設置できる罠の数に制限があります。最大で30個までと決められていて、これにはくくり罠や箱罠が含まれます。私の得意な罠はくくり罠ですね。ただし、くくり罠で動物を吊り上げるのは禁止されています。これは動物愛護の観点から残酷とされているためで、罠にかかった動物はその場で走り回る程度です。自然と向き合う狩猟は、生と死が隣り合わせの世界です。」 記者「益田さんの座右の銘を教えていただけますか?」 益田さん「私の座右の銘は「農地を守る」ですね。私たちの仕事は、牛を守ることだけでなく、農地を守ることも含まれています。狩猟によって野生動物による獣害を減らすことは、この座右の銘にも深く関係しています。農地を守ることは、私たちの暮らしや食文化を守ることにも繋がるのです。」 ウルカル
化石サンゴを主原料とした「ウルカル」。
カビ毒によるゲリが多かった際に使用して徐々に改善していったそうです。
Writer_Y.Eguchi
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概要和牛農家に3プライドを取材しました。 ■取材日時■
4月 2025
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