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株式会社永吉ファーム 永吉夢輝
鹿児島県 大島郡(’徳之島町) 親牛:741頭、子牛:464頭 取材日:2025年8月19日
止めるな、走り続けろ。
記者「永吉ファームのこだわりについて教えてください。」
永吉さん「私たちが特に力を入れているのは“省力化”です。人の手だけでは到底回らない頭数を飼育しているので、機械化は欠かせません。自社で粗飼料を生産するための農業機械や、牛の給餌を自動で行う自動給餌機、子牛用の保育ロボットなど、導入できるものは積極的に取り入れています。牛の健康管理も機械で効率的に行い、作業負担を減らすことで、より良い飼育環境を整えるように努めています。」 記者「省力化で従業員の負担を減らしているとのことですが、現在どのくらいの人員で運営されているんでしょうか?」 永吉さん「現在、役員が5名、社員が9名、パートが4名の合計18名で運営しています。牛の頭数は、生産牛が741頭、子牛が464頭の合計約1,200頭を管理していて、1人あたり約70頭前後を見る計算です。この規模になると、やはり人の力だけでは難しく、機械化とチームワークが本当に重要になってきます。」 記者「導入する機械はどのように情報収集し、選定しているんですか?」 永吉さん「主に付き合いのある業者さんから情報を得ています。2~3社から話を聞いて、良さそうだと思ったものはまず導入してみるスタイルです。社長がYouTubeなどでも情報を収集していて、気になったらすぐ試してみるんです。やってから考える、試してから改良するという姿勢が基本で、結果的にそれが一番効率的だと感じています。」 記者「牛舎内で多様な人材が働いているのも印象的でした。その狙いはどこにあるのでしょうか?」 永吉さん「とにかく“待つ時間”がもったいないんです。例えば、獣医や電気屋さんを外部に頼むと時間がかかる。そのタイムラグを減らすために、自分たちでできることは自分たちでやる体制にしています。今は電気の簡単な修理ができる従業員が3人いますし、受精師の資格を持つ従業員もいます。なんでも自社内で完結できるようにしておくことで、トラブル時の対応力が格段に上がります。」 記者「飼料についてですが、出荷前の牛がとても大きく育っていて驚きました。飼料に対して何か特別なこだわりはあるのでしょうか?」 永吉さん「実は“こだわらないこと”がこだわりなんです。複数の業者さんと取引があるので、その年の価格や提案内容によって使う飼料はどんどん変えています。自分が戻ってきて3年経ちますが、その間でも大きく内容は変わっています。固定するより、臨機応変に対応していく方が、牛にも経営にもいいと思っています。」 記者「昨今の物価高や飼料代の高騰の中で、どうやってコスト管理しながら経営を拡大されているのでしょうか?」 永吉さん「とにかく“止めないこと”ですね。投資を止めない、お金を回し続けることが大切です。借入制度なども上手に活用しながら、数字をしっかり見てリスクとリターンを見極めています。相場を見て早出しすることもあれば、市場の動きを予測して繁殖方針を変えることもあります。全部“読み”なんですよ。でも、その読みを支えるのは、日々の情報収集と、チャレンジを止めない姿勢だと思っています。」 数をこなせば、質になる。
記者「永吉さんの牛の状態に点数をつけるとしたら、どのくらいだと思われますか?」
永吉さん「今の状態なら“120点”です。もちろん満点超えてますよ。でも、それは僕ひとりの力じゃなくて、従業員全員が日々本気で取り組んでくれてるから出せる数字です。飼料管理、環境整備に至るまで、みんなが手を抜かずにやってくれてるおかげですね。やれることはやってますし、今の時点でのベストを尽くしているっていう実感があるので、自信を持ってこの点数をつけられます。」 記者「すでに120点の状態とのことですが、これからさらに目指していく先もあると思います。現状の課題や今後の目標があれば教えてください。」 永吉さん「やっぱり“暑熱対策”が一番の課題です。徳之島って湿気がすごくて、風通しも地形次第で全然違うんですよ。最近は換気扇の取り替えなんかもやってますけど、やっぱりまだまだ快適な環境とは言い切れないですね。自分たちが働いていて“ちょっとキツいな”って感じる環境は、牛にとっても良くないはず。だから、まずは人が快適に働ける環境づくりを進めて、それが牛の快適さに繋がるようにって考えています。」 記者「自然環境や台風の被害も多い地域かと思いますが、そのあたりの対策はどのようにされていますか?」 永吉さん「台風は正直、防げないんですよ。だから“飛ぶ前提”で考えてます。屋根が飛んでもすぐに復旧できるような構造にして、柱がやられたら時間かかるから、そうならない設計にしています。被害ゼロは無理でも、最小限に抑えることはできる。そういう視点で、今の牛舎づくりも工夫しています。幸い、大工さんも従業員にいるので、復旧も自社内で完結できる体制を整えてます。」 記者「おすすめのアイテムを教えてください。」 永吉さん「やっぱり“自動給餌機”ですね。導入したエリアではレバー1本で全頭に飼料が配られるので、作業の効率がまるで違います。昔は『1頭ずつ見ながら手でやる方が安心』という気持ちもありましたけど、今は“数をこなすことで質も上がる”という考えに変わりました。従業員のスキルも頭数が増える中で自然と鍛えられていくんですよ。やってみて初めてわかることが本当に多いです。」 想像すれば、道は拓ける
記者「永吉さんが師匠、もしくは目標にしている人物はいますか?」
永吉さん「中学校の時に出会った、水迫ファームの水迫栄治さんという方が、自分にとっての原点です。『想像してできないことはない』という言葉をかけてくれたのが強く印象に残っていて、今でもその言葉を胸に動いています。かっこよくて、人としても尊敬できる存在で、自分も“この人みたいになりたい”と思ったのが、この仕事に進んだ理由の一つです。」 記者「その言葉を受けて、実際に実現したと感じている経験などはありますか?」 永吉さん「例えば、徳之島の離島で生まれ育ちましたが、『獣医系の大学に行こう』と本気で考えた時、学力は正直自信なかったです。でもAO入試の制度など、自分に合った道を探して入学できたんですよね。結局、思い描くことで道が見えてくるし、そのために何をすればいいかを自然と考えるようになる。あの言葉がなければ、そもそも“想像”することすらしてなかったと思います。」 記者「最後に座右の銘を教えてください。」 永吉さん「座右の銘は『三頭寄れば百頭力』です。普通は“三人寄れば文殊の知恵”ですが、うちの場合は三頭(牛)っていうのがしっくりきていて(笑)。人が力を合わせれば、やれることは無限にあると思ってます。自分ひとりでは限界があるけど、仲間とやればとんでもないことができる。だから事業ももっと大きくしていきたいし、会社としても成長させたいと考えています。」 記者「今後の事業拡大の目標は、どのくらいの規模を見据えていらっしゃいますか?」 永吉さん「今の約1,200頭を倍の2,500頭規模まで持っていきたいですね。すでに今のやり方で結果が出ているので、それをベースに広げていけると思っています。もちろん規模が大きくなれば、経営の仕方も変わるでしょうし、従業員との関わり方も考えていかないといけない。最終的には、自分の理念をどこまで広げていけるかがカギになると思っています。」 自動給餌機
自動給餌機はレバー一本で全頭に均一に飼料を配れるため、作業時間を大幅に短縮できる優れたアイテムです。従来の手作業と比べて労力が減り、忙しい現場でも安定した給餌が可能になります。従業員の負担軽減にもつながり、大規模な飼養にも対応できる現代の牧場には欠かせない機械です。
Writer_T.Shimomuro
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概要和牛農家に3プライドを取材しました。 ■取材日時■
12月 2025
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