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和牛農家 3プライド記事

日高牧場 日高卓磨の3プライド

8/20/2025

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日高牧場 日高卓磨
鹿児島県 大島郡(伊仙町)
育成牛:3頭、親牛:42頭、子牛:20頭
取材日:2025年8月20日
  • 牛に託す闘争心
  • 未熟こそ武器、牛と自分を育てる道半ば
  • 知ることが、生き残る力だ

牛に託す闘争心

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記者「日高さんの牧場で、特にこだわっていらっしゃるポイントを教えてください。」

日高さん「うちの牧場では、人工授精の際にエコー診断装置を活用しています。それに加えて、子牛の体重を毎月測って、1日あたりの増体量(DG)を数値でしっかり管理しています。また、出荷の平均が270日ですが、うちはあえて220〜230日ほどで早出し。しかもその時点で300kg以上になるよう育てています。感覚に頼らず、数字と目で見て判断するのが自分のスタイルですね。」


記者「数字や見える形で判断するというのは、日高さんならではのこだわりなんですね。飼料の部分でも何か工夫されていますか?」

日高さん「特に気をつけているのがミルクから餌への切り替えです。この時期にストレスをかけると一気に食いが落ちるので、できるだけ自然に切り替えられるよう心がけています。切り替え方一つで体重の伸びがまったく変わるんです。自分のやり方にしてからは、同じ時期の子と比べても体重が明らかに違ってきましたね。」


記者「そのミルクから餌への切り替え、具体的にはどんな工夫をされているんでしょうか?」

日高さん「うちは夜行性の牛が多いので、まず夕方のミルクを1週間かけて少しずつ減らしていきます。完全にやめたら次は朝の分を1週間かけて減らす。この“じっくり2週間”がポイントで、急がないことで牛のストレスを最小限に抑えられるんです。夜にしっかり餌を食べさせるようになると、胃の作りも変わって、日中もちゃんと食べてくれるようになるんですよ。」


記者「牛の性質に合わせた方法でストレスなく切り替えているんですね。他にもこだわっている点があれば教えてください。」

日高さん「自分のところでは闘牛も飼っているんですが、毎日外に出して運動させたり、スキンシップとしてブラッシングをしてあげることも欠かしません。ストレスが溜まると人に向かってくることもあるので、常にリラックスした状態を保つよう心がけています。牛の状態をよく観察して、ちょっとした変化にも気づけるようにしています。」


記者「闘牛は何歳ぐらいから本格的に大会に出場できるんですか?」

日高さん「個体差はあるんですけど、だいたい4〜5歳くらいからが目安ですね。その頃になると体格も整ってきて、試合でしっかり闘えるようになります。血統や気性も大事ですが、やっぱり大きさ、つまり“増体”が鍵ですね。体重がある分だけパワーも違ってきますから。」


記者「闘牛の大会には体重別のクラスがあるんですか?」

日高さん「あります。1トン以上が『全島一(ぜんとういち)』という無差別級のようなクラスで、その下に重量級(〜1,000kg)、中量級(〜900kg)、軽量級(〜800kg)、ミニ軽量級(〜700kg)と分かれています。試合の1ヶ月前には市場で計量があって、そこでどのクラスで戦うかが決まるんですよ。ちょうどボクシングのような感じです。」


記者「なるほど。ちなみに日高さんの牛はどのクラスで戦う予定なんですか?」

日高さん「今は1歳半の牛が2頭いて、大きいほうはすでに1.2トンあるので全島一クラスになります。もう一頭は軽量級になるかなって感じです。まだ実績はないですが、これからですね。闘牛場に出る前に軽く喧嘩はさせたりしていますが、本格的な大会にはまだ出してません。」


記者「町をあげて大会が開かれるとも聞きました。かなりの盛り上がりだそうですね?」

日高さん「はい、ポスターも貼られますし、SNSでも告知されてます。大会によっては2,000〜3,000人ぐらい集まることもあって、島全体がひとつになるイベントです。やっぱり闘牛は島の文化ですから、みんなの気持ちが熱くなるんですよね。」


記者「そういった環境の中で、観察力もかなり磨かれると聞きますが、実際のところどうですか?」

日高さん「やっぱり毎日牛の顔を見ていると、ちょっとした変化にもすぐ気づくようになります。『今日元気ないな』『なんか違和感あるな』って、まるで家族のように感じるんです。そういうのが自然と身について、ある意味“洞察力”みたいな感覚にも近いですね。」


記者「闘牛と普通の牛の飼育で、大きく違う点はありますか?」

日高さん「ありますね。どの牛も大切にしていますけど、闘牛はもう自分の子どもみたいな存在です。寝るときも汚れないように敷物を敷いてあげたり、ハエが寄らないように清潔を保ったり、とにかく快適に過ごせるように気を遣います。子牛なんかは2日に1回はブラッシングしていますよ。」


記者「日高さんにとって、闘牛の魅力ってどんなところにあるんですか?」

日高さん「自分がずっと可愛がってきた牛が、命をかけて闘う姿を見ると、なんていうか…自分の中にある“闘争心”を代わりに出してくれているような感覚があります。人間は簡単に喧嘩なんてできないけど、牛を通して自分の想いをぶつけられるっていうか。勝った時の喜びは格別ですよ。」

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記者「まさに格闘技のような魅力があるんですね。ブレイキングダウンとかプロレスみたいな、闘いの中にある“熱”に惹かれる感覚と似ているのかもしれませんね。」

日高さん「そうですね。喧嘩って言ったら聞こえ悪いかもしれないけど、あの熱さとか緊張感、そして勝ったときの達成感。闘牛の魅力って、そういう“本能”を刺激してくれるところにあるんじゃないかなって思います。」

未熟こそ武器、牛と自分を育てる道半ば

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記者「今、飼っている牛の状態に点数をつけるとしたら、何点くらいでしょうか?」

日高さん「うーん、自分の中では50点ですね。セリで高値がつくような牛も出せるようにはなってきたんですけど、やっぱり自分自身まだ27歳で、まだまだ未熟だと思ってます。これからもっと成長して、納得のいく牛づくりができるようにっていう意味も込めて、あえての50点ですね。」


記者「なるほど、その50点という評価には、具体的にどんな課題があると感じてらっしゃいますか?」

日高さん「今は牛の半分くらいに受精卵を使っているんですけど、夏場になると受胎率がやっぱり落ちるんですよね。温度や湿度の影響もあると思いますが、そこが大きな課題ですね。もう少し安定して繁殖できるようにしたいという思いは強いです。」


記者「やはり闘牛も飼っていらっしゃる分、増体などにもかなり気を遣われていると思います。220〜230日で300kg以上の牛というのは、なかなか大変な基準では?」

日高さん「そうですね。増体を狙っていく中で、どうしても体重が伸びにくい子牛もいます。そういった場合は、親の系統に問題がある可能性もあるので、いい種牛の受精卵を使って次の世代につなげるようにしています。そうすることで、将来的に強くて育てやすい牛が増えていくと思っています。」


記者「ちなみに、今注目している種牛やおすすめの血統などはありますか?」

日高さん「鹿児島県の『正忠平』っていう系統が、自分の中では今すごく気に入ってます。『勝忠平』の血を受け継いだ牛で、自分で実際に育ててみた感触としては、とにかく育てやすいし、体格もしっかりしています。増体が良いというのは、育てる上でかなり大きなメリットです。」


記者「おすすめアイテムや道具があれば教えてください。」

日高さん「やっぱり『エコー』ですね。人工授精のときに使う超音波診断機なんですけど、これがあるのとないのとでは大違いです。以前勤めていた牧場でもずっと使っていて、自分の牧場を始めてすぐに導入しました。感覚に頼るんじゃなく、実際に目で確認できるのは大きいですね。」


記者「感触だけでなく、目で見て判断できるというのは安心感も違いますよね。導入されている農家さんも増えているんでしょうか?」

日高さん「まだ島では10人くらいしか使ってないと思います。だからこそ、自分にとっては“武器”だと思ってます。今使っているのは、鹿児島の獣医さん・伏見先生に紹介してもらったカラードップラーの機種で、血流も色で見えるんです。高性能でありながら価格も手頃で、重宝しています。」

知ることが、生き残る力だ

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記者「師匠や、目標にされている方がいれば教えていただけますか?」

日高さん「はい。やっぱり同じ島の永吉夢輝さんや輝彦さんですね。島内で一番の頭数を持っていて、長年やってきた経験や姿勢には本当に尊敬しかないです。自分も負けてられないなって、いつも刺激を受けてます。同じ島にいるからこそ、身近な目標として意識していますし、農家としての在り方を学ばせてもらっています。」


記者「永吉さんは全国でも有名な繁殖農家さんで、頭数も2,000頭を超えているとか。すごいですね。」

日高さん「ほんとにすごいです。正直、頭数では勝てないと思ってます。だからこそ、何かひとつでも勝てるものを持ちたい。そう思って日々努力しています。やっぱり何もかもで勝とうなんて思っても無理ですから、自分なりに強みを作って、そこでは絶対負けないって気持ちでいます。」


記者「目指すべき存在ですね。闘牛の世界では目標にしている方はいらっしゃいますか?」

日高さん「やっぱり父ですね。祖父の代から牛を飼ってて、父もずっとやってきているんですけど、闘牛の目利きに関しては本当にすごいです。小さい頃から、“この牛はここが良い・悪い”っていうのを細かく教えてくれて、今でも自分には見えてない部分が見えているんです。他の人は教えてくれないようなことも父からは学べる。やっぱ負けたくない存在ですね。」


記者「最後に、日高さんの“座右の銘”を教えていただけますか?」

日高さん「“無知が一番のリスク”ですね。やっぱり何も知らないと、何もできない。生き物を相手にしていると、いつ何が起きてもおかしくないんです。だからこそ、何かを知っていれば、それに対応する術を考えられる。知らないことが一番危ないって、日々感じてます。自分はまだまだですが、だからこそ常に勉強して、もっと上を目指していきたい。調べて、聞いて、やってみて、っていう繰り返しですね。」

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エコー(超音波診断装置)

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人工授精時の確認に役立つエコーは、視覚的に妊娠状態や血流を確認できる優れた診断機器です。感触だけに頼らず、正確な判断ができるため、繁殖管理の精度が大幅に向上します。日高さんは導入直後からその効果を実感し、現在はカラードップラー機種を愛用。高性能ながら価格も手頃で、“自分の武器”と語るほど信頼を寄せる重要アイテムです。

Writer_T.Shimomuro
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